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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)4313号 判決 1965年10月13日

原告 関東新日電販売株式会社

右代表者代表取締役 加納政男

右訴訟代理人弁護士 伊集院実

被告 株式会社 月島テレビ商会

右代表者代表取締役 保田清

右訴訟代理人弁護士 小川休衛

同 金田絢子

主文

1、被告は原告に対し二八九、七三三円及び

内一九三、三〇〇円に対する昭和三八年一二月三一日から、

内九六、四三三円に対する昭和四〇年五月二九日から、

完済までの年六分の金員を支払わなければならない。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

3、この判決は第一項の元金のうち二〇万円にかぎり、仮に執行することができる。

事実

1、原告の請求の趣旨は主文第一、第二項と同旨(訴状中、請求の趣旨に記載の八九、七三三円は九六、四三三円の誤記と認める)の判決及び仮執行の宣言を求めることで、請求の原因及び被告の抗弁に対する主張は別紙中のその記載のとおりである。

2、被告の答弁及び抗弁は別紙中のその記載のとおりである。

3、証拠関係は別紙中のその記載のとおりである。

4、被告に対する本件訴状送達の日は昭和四〇年五月二八日である。

理由

1、原告主張の請求原因事実に争いはない。

2、被告の抗弁のうち、原被告間に取引商品中、被告の売残り品を無条件で原告に返品する約定があり、約定がないとしても原被告間の継続的な取引における慣行であるとし、または、原被告と同一業界における慣行であるとするものについては、なる程≪証拠省略≫によれば、事実として、被告のような家庭電気製品の小売商が原告のような卸商に売残商品を返品していることがあり、原被告間にもその事例が多かったことは認められるが、それが、常々小売商側からの一方的意思表示のみで行われうる慣行に基くとか、原被告間の約定または慣行によるものとは直ちに認め難く、むしろ、証人赤星禎一及び同上松不二夫の各証言によれば、卸売取引が継続する間において卸商側が小売商の資金繰りを援助したり、販売を拡張したりするために便宜なことから一種のサービスと販売方策として、その都度両者協議し、なるべく小売商側の便益をはかって協議のととのった部分にかぎり返品に応じていたに過ぎないものと認められ、したがって、右部分の被告の抗弁を容れることはできない。

3、次に、商品が不良であったから、原告からその引渡を受けた都度直ちにその旨を告げて、返品方を原告に申し出でたとする被告の抗弁については、その抗弁における商品の品名、数量、価格及びそれらが原告から被告に売り渡されたものであることに争いはないが、右引渡の都度被告から原告に不良品の旨を通告した点については、証人工藤鉄男の証言は明確を欠き、被告会社代表者本人尋問の結果には一部それに沿う供述があるけれども、それをそのままに採用し難い。

すなわち、本訴における抗弁が、当初そのような不良品の故の返品の主張ではなく、にわかに、最後の口頭弁論でその旨の抗弁が提出された訴訟の経過と、右被告会社代表者本人尋問の結果及び証人赤星禎一の証言によれば、本件手形が振り出された日からその満期までの間に、他の多くの取引に基く商品代金が支払われて来たこと、原被告間の取引が停止されるに至った原因は原告の店員と被告との間の他の感情上の問題もあったことなどからすれば、右抗弁における商品が果して不良品であったか否かはしばらくおき、その不良の旨を被告がその主張の各商品受領の後、その都度全部について遅滞なく、原告方に明瞭に通知し、商人間における売買契約の解除に必要とされる処置を講じたか否か疑わしく、それがなされたとしても、一部の商品に過ぎず、その主張の全商品についてなされたとは認定し難く、その特定をなしえないからである。

そして、その他に被告の右抗弁を認めるのに足りる十分な証明はない。

したがって、右抗弁も結局これを排斥するの外はない。

4、被告の各抗弁が以上のように排斥を免れない以上、争いのない原告の請求原因事実によって判断するのほかはなく、それによれば、原告の本訴請求は正当であるから、これを認容することとし、ただ、被告会社代表者本人尋問の結果によればその抗争の商品に不良品が全くなかったとはいえず、そのうち若干の商品については遅滞なくその旨原告に通知をしたものもありうると認められるので、その点を考慮し、原告の仮執行をなしうる限度を制限し、民事訴訟法第八九条及び第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(判事 畔上英治)

<以下省略>

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